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高血圧とは
健康診断で血圧が高めと言われたことがある方は、いらっしゃいませんか。
高血圧は、自覚症状がほとんどないまま静かに進行し、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こして健康寿命を縮める大きな要因のひとつとされています。
そのため「高血圧の基準値をどれくらいに設定するのが適切か」については、世界的にも多くの研究や議論が続けられてきました。こうした流れを受け、日本高血圧学会は2025年に6年ぶりとなる新しい診療ガイドラインを発表しました。今後は、このガイドラインをもとに高血圧診療がおこなわれていくことになります。
参考文献:日本高血圧学会高血圧管理・治療ガイドライン委員会 編『高血圧管理・治療ガイドライン2025』ライフサイエンス出版、2025年
高血圧とは何でしょうか
高血圧とは、血管の中を流れる血液が血管の壁を押す力である血圧が、慢性的に正常値より高い状態が続いている病気のことです。
血圧は、心臓が収縮して血液を押し出す力と、血管のかたさや太さなどの状態によって決まります。さらに腎臓や神経系、内分泌系など多くの仕組みが関わっており、その中でも食塩の摂取量は重要な要素のひとつです。
血圧の基本知識
血圧には、次の2つがあります。
収縮期血圧(最高血圧)
心臓が収縮して血液を押し出したときの、血圧のいちばん高い値
拡張期血圧(最低血圧)
心臓が拡張してリラックスしているときの、血圧のいちばん低い値
血圧は一日中一定ではなく、朝の目覚めとともに上昇し、日中はやや高め、夜間や睡眠中は低めになるなど、常に変動しています。季節によっても変化し、一般に冬のほうが夏より高くなりやすい傾向があります。
診療ガイドラインの新しい基準
診断基準と血圧分類
一度だけ血圧を測って高い値が出ても、それだけで高血圧症と診断されるわけではありません。繰り返し測定しても、正常より高い状態が続く場合に高血圧と判断します。
2025年に改訂された「高血圧管理・治療ガイドライン2025」でも、高血圧と診断するための基準値は従来と変わっていません。
診断の目安となる値
| 診察室血圧 | 最高血圧 140 mmHg以上 または 最低血圧 90 mmHg以上 |
|---|---|
| 家庭血圧 | 最高血圧 135 mmHg以上 または 最低血圧 85 mmHg 以上 |
血圧の分類
表 JSH2025における血圧分類(改変)
| 診察室 | 家庭 | |
|---|---|---|
| 正常血圧 | 最高 120 mmHg未満 かつ 最低 80 mmHg未満 |
最高 115 mmHg 未満 かつ 最低 75 mmHg未満 |
| 正常高値血圧 | 最高 120〜129 mmHg かつ 最低 80 mmHg 未満 |
最高 115〜124 mmHg かつ 低 75 mmHg 未満 |
| 高値血圧 | 最高 130〜139 mmHg かつ または 最低 80〜89 mmHg |
最高 125〜134 mmHg かつ または 最低 75〜84 mmHg |
| Ⅰ度高血圧 | 最高 140〜159 mmHg かつ または 最低 90〜99 mmHg |
最高 135〜144 mmHg かつ または 最低 85〜89 mmHg |
| Ⅱ度高血圧 | 最高 160〜179 mmHg かつ または 最低 100〜109 mmHg |
最高 145〜159 mmHg かつ または 最低 90〜99 mmHg |
| Ⅲ度高血圧 | 最高 180 mmHg 以上 かつ または 最低 110 mmHg以上 |
最高 160 mmHg以上 かつ または 最低 100 mmHg以上 |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
成人の降圧目標
今回の改訂で大きく変わった点は「どこまで血圧を下げるか」という降圧目標が、年齢や持病によって細かく分かれていたものから、すべての成人で統一されたことです。
成人高血圧患者さまにおける基本的な降圧目標
診察室血圧
130/80 mmHg 未満
家庭血圧
125/75 mmHg 未満
家庭で測る血圧は、リラックスした状態で測定できるため、ふだんの血圧をより正確に反映するといわれています。当院でも、診察室の血圧だけでなく、家庭血圧の記録を重視しながら治療方針を考えていきます。
75歳以上とADLによる降圧目標
高血圧の新しい基準で、とくに重要なポイントのひとつが、七五歳以上の高齢者では ADL 日常生活動作によって降圧目標を変えるという考え方です。
ADL(日常生活動作)とは
ADL (Activities of Daily Living)とは、人が日常生活を送るために必要な動作や活動のことで、次のように分けられます。
| 基本的ADL | 起き上がり、移乗、移動、食事、更衣、排泄、入浴、整容、洗顔など、日常生活に必須の基本的な動作 |
|---|---|
| 手段的ADL | 買い物、食事の準備、掃除や洗濯などの家事、服薬管理、金銭管理、交通機関の利用、電話対応など、より複雑で高次の判断力や労力を必要とする活動 |
まず ADL の程度を評価し、その状態によって目標とする血圧を段階的に設定していきます。
75歳以上の高齢者におけるADLと降圧目標
| 対象者 | 目標 | |
|---|---|---|
| カテゴリー1 | 自力で外来通院が可能で、ADLが保たれている方 | 130/80 mmHg 未満 |
| カテゴリー2 | 外来通院に介助が必要で、手段的ADLが低下している方 | 収縮期血圧 140 mmHg 未満 |
| カテゴリー3 | 外来通院が困難で、基本的ADLが低下している方 | 収縮期血圧 150 mmHg 未満 |
| カテゴリー4 | エンド・オブ・ライフの段階にある方 | 個別に判断する (目安 140〜160 mmHg) |
※表は左右にスクロールして確認することができます。
高血圧の治療は、将来の心筋梗塞や脳卒中などのリスクを減らすために、長期間にわたり続けていくものです。ただし ADLが低下している高齢者では、残された健康寿命はそれほど長くないことも多く、遠い将来のリスクよりも、今の生活をどれだけ快適で有意義に過ごせるかがより重視されます。
年齢だけでなく ADL という視点を取り入れ、降圧目標を段階的に示した点は、今回のガイドラインの大きな特徴といえます。
高血圧症の種類
高血圧症には、原因がはっきりしない本態性高血圧症と、原因となる病気がある二次性高血圧症があります。
本態性高血圧症
高血圧患者さまの約九割を占めるタイプで、これといった原因が特定できない高血圧です。遺伝的な体質に、さまざまな生活習慣の要因が重なって起こる生活習慣病と考えられています。
関係する要因の例
- 過剰な塩分摂取
- 肥満
- 過度の飲酒
- 精神的ストレス
- 自律神経の調節異常
- 運動不足
- 野菜や果物に含まれるカリウムなどミネラルの不足
- 喫煙
二次性高血圧症
体の中に血圧を上げる原因となる病気があり、そのために血圧が高くなっている状態です。
主な原因疾患の例
- 腎動脈狭窄
- 原発性アルドステロン症
- 褐色細胞腫
なかには外科的治療により高血圧の改善が期待できるものもあります。
高血圧が引き起こす合併症
高い血圧の状態が長く続くと、血管は常に強い圧力にさらされ、次第に厚く硬くなっていきます。これが、高血圧が関わる動脈硬化で、さまざまな合併症の原因となります。
代表的な合併症
脳血管系
- 脳出血
- 脳梗塞
心血管系
- 心筋梗塞
- 心肥大
- 心不全
その他
- 大動脈瘤
- 腎硬化症
- 眼底出血
こうした重い合併症を防ぐために、高血圧にならないよう予防すること、すでに高血圧と診断されている方は血圧をしっかり管理することがとても大切です。
日常生活での注意点
減塩の重要性
塩分を摂り過ぎると、体内に水分がたまりやすくなり、血液の量が増えることで血圧が上がります。目安として、一日の塩分摂取量を6グラム未満に抑えることが推奨されます。
寒さへの対策
暖かい場所から急に寒い場所に移動すると血管が縮み、血圧が上がりやすくなります。
- 外出時はマスクやマフラー、手袋などで肌の露出を減らす
- 居間と浴室、トイレとの温度差を小さくする
- 冷房と外気の温度差を五度以上にしない
といった工夫が有効です。
入浴時の注意
入浴も血圧に大きな影響を与えます。
- 湯温は42度を超えるような熱いお湯は避け、四十度前後のぬるめのお湯にする
- 入浴時間は5〜10分程度を目安にし、長湯は控える
- 浴室はあらかじめ暖めておく
といった点に気をつけましょう。
排便時の注意
いきみが長くなると血圧が一時的に上昇します。便秘を予防し、排便時の負担を減らすことが大切です。
- 毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつける
- 朝食前に冷水や冷たい牛乳を飲む
- 繊維の多い野菜や海藻類を意識してとる
- お腹を「の」の字を描くようにマッサージする
- 洋式便器を使う
といった工夫が役立ちます。
十分な睡眠と休養
過労や緊張、精神的なストレスは血圧を上げる原因になります。
- 毎日規則正しい生活リズムを保つ
- 十分な休養と睡眠をとる
- 過重労働や夜更かしを避ける
ことを心がけましょう。
禁煙
喫煙は血管を収縮させて血圧を上げるだけでなく、血液の流れを悪くし、動脈硬化を進めます。高血圧の治療や予防のうえでも、禁煙は非常に重要なポイントです。
適量の飲酒
大量の飲酒は血圧を上昇させますが、少量の飲酒は動脈硬化の予防に役立つことが知られています。
目安
この範囲を超えないように心がけましょう。
| 男性 | アルコール量として一日20〜30ml以下
|
|---|---|
| 女性 | 男性の半分程度が目安 |
肥満の解消
肥満は血圧の上昇だけでなく、心臓への負担や動脈硬化の進行にも関わります。
体格指数 BMI を25未満に保つことを目標とします。
ただし、急激な減量は体に負担となるため、医師と相談しながら、適切なペースと方法で体重を減らしていくことが大切です。
適度な運動
運動の許容範囲は、高血圧の程度や合併症の有無によって変わります。運動を始める前に、一度医師へ相談されることをおすすめします。
比較的取り入れやすい運動の例
- 散歩
- 自分のペースでのジョギング
- ラジオ体操
- 自転車
運動中に息切れや動悸、めまいなどを感じた場合は、無理をせずに中止し、医師に相談してください。
家庭血圧測定のポイント
家庭での血圧測定は、高血圧の管理にとても役立ちます。血圧はさまざまな条件で変化するため、できるだけ同じ条件で測ることが大切です。
測定の基本
- いつも同じ腕で測る
- 左右で差がある場合は、高いほうの腕で測定する
- 同じ姿勢で測る
- 座った姿勢が基本
- 毎日同じ時間帯に測る
目安となる時間帯
| 朝 | 起床後一時間以内 食事・服薬の前 |
|---|---|
| 夜 | 就寝前 |
体調がすぐれない時も、
記録として測定しておくと役に立ちます。
測定時の注意点
- 測定前に5〜10分ほど安静にしてから測る
- きついシャツなどで腕を締め付けないようにする
- 血圧計は腕と同じ高さに置く
- できるだけ長期間、測定値を記録しておく
血圧計そのものも、使い始めのときと、その後数年に一回は点検を受けておくと安心です。
高血圧の治療
高血圧治療の基本は、生活習慣の見直しです。
- 減塩
- 適正体重の維持
- 適度な運動
- 禁煙
- 節酒
- ストレス管理
こうした取り組みをおこなってもなお血圧が十分に下がらない場合には、医師の判断のもとで降圧薬による治療をおこないます。
薬を服用する際に大切なのは、
自己判断で量を変えたり中止したり
しないことです。
途中で薬をやめてしまうと、血圧が元の値に戻るだけでなく、以前よりさらに高くなってしまうこともあります。副作用や体調の変化が気になるときは、必ず医師までご相談ください。
医療法人河合クリニックでの高血圧診療
医療法人河合クリニックでは、高血圧の予防から治療まで、患者さまお一人ひとりに合わせた包括的なケアをおこなっています。
- 定期健診による血圧チェックとリスク評価による早期発見
- 生活スタイルに合わせた治療計画の立案
- 栄養指導や運動療法
- 減塩指導
などの生活指導を組み合わせ、継続的な血圧管理と合併症予防に取り組みます。
また、家庭での血圧測定の方法についても丁寧にお伝えし、ご自身での管理をサポートします。
高血圧は「サイレントキラー」と呼ばれるように、
自覚症状がほとんどないまま進行することが多い病気です。
しかし、適切な予防と治療によって、合併症を防ぐことは十分可能です。血圧が気になる方、家族に高血圧の方がいる方、生活習慣を見直したい方など、お悩みの方はお気軽に当院までご相談ください。

